社会福祉、環境保護、各種の人権擁護運動などの公益的活動は、ただ思いだけではその活動を継続し効果を上げることができない。組織の継続的運営、行政との交渉、実効性ある戦略などのために法的知識·技術、法的思考が力のひとつとして必要となる。このような分野で法律家として活動するためには、行政活動に関する法律、特定の政策課題についての正確な法知識、民事訴訟·行政訴訟へのアクセス方法、組織運営に関する基本的法律関係を身につけておくことが望ましい。このような観点から、上記a)公務員をめざす者で挙げたモデルを基本にして、①憲法2-1·2-2、行政法1-1·1-2、行政法2-1·2-2、行政法3-1·3-2を軸とした行政活動に関する法律、②環境法分野、消費者法分野、高齢社会と法、社会保障法、成年後見法制などの特定政策課題を扱う科目、③会社法1・2、労働法1・2、租税法1・2、法人税法1・2など組織運営に必要な科目、④民事訴訟法1・2を自らの関心、必要性にあわせて履修することを勧める。共通科目·関連部門科目の履修や卒業単位以外の学習·体験により、関心ある分野の問題状況、社会的事実を知り、洞察を深める努力を大学時代に重ねておくことが大切である。3.企業法務、一般企業への就職、起業等、企業活動分野をめざす者法律による企業統治、企業の法令遵守(コンプライアンス)等、企業活動における法律の役割の拡大を示す理念が唱えられて久しい。企業間の合併を巡る法律紛争や企業と従業員の著作権帰属を巡る裁判などだけでなく、有名企業が法令違反の決算手続·報告書開示によって経営者の退陣、グループ企業の売却など企業の存続を危うくする事態を招いて社会問題化している事例をみても、企業活動に関する法律の重要性が理解できる。企業法務の専門家として企業の法務部等で活動する者はもちろん、今後一般企業で従業員として活動する者、自ら起業しようと志す者にとって、企業活動に関する法律知識は、不可欠の能力となっている。·入門、基礎演習、必修科目以外に、次の科目の履修を勧める。第1群:商取引法、会社法1・2、租税法1・2第2群:民事訴訟法1・2第3群:契約法2、民事執行法1・2第4群: 倒産法1・2、国際私法、国際取引法、競争法、知的財産法1・2、労働法1・2などから興味に応じてなるべく多く履修することを勧める。(下記参照)第5群: 法人税法1・2、金融商品取引法、グローバル企業法、不動産特別法、信託法、保険法、海商法、ワイン法など、企業活動に関連する科目から自分の興味、志望する企業の分野·業態に応じて数多く科目を履修することを勧める。企業のリスク管理の視点から、環境問題の展開と法1・2、環境政策と法などの環境法分野、消費者取引特別法1・2・3、消費者行政法などの消費者法分野の知識により、他大学出身者にはない付加価値をつけることも可能である。(下記参照)第6群: 英米法2-1·2-2、EU法は、国際化した取引社会で重要な経済地域の法律であり、いずれかあるいは両方の履修を勧める。第7群:外国語文献講読第8群:法学部生のキャリアデザイン講座· 企業活動の各場面(取引、組織·管理、金融)に応じて民事法分野の科目は、次のような段階的整理が可能である。進路·関心に応じて重点的に、またはバランスよく学ぶ参考とされたい。85b) 公益的活動をめざす者
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