123精神保健福祉士法(以下法)は、精神障害者の長期入院やいわゆる社会的入院の問題が指摘され、精神障害者の社会復帰を促進することが課題となる中で、その課題解決、ならびに退院後の環境整備などについての様々な支援を行う専門職の養成、確保が求められる中で、1997年に創設された。本学では、本法律の制定以来、「精神保健福祉士」の養成を行っている。社会学部社会福祉学科の学生が、学科教育方針とそれに伴うカリキュラムに沿って、所定の科目の単位を取得し卒業(卒業見込を含む)すると、精神保健福祉士国家試験受験資格が得られる。精神保健福祉士の職務は、「精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識及び技術をもって、精神科病院その他の医療施設において精神障害の医療を受け、又は精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設を利用している者の地域相談支援の利用に関する相談その他の社会復帰に関する相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助を行うこと」(法第2条)である。2012年に、法施行後最初のカリキュラム改正がなされた。そして2019(令和元)年度には、精神保健福祉士の役割の拡大、職域の拡大、包括的な相談支援を担える人材養成の必要性を背景として厚生労働省による教育内容等の見直しが行われるに至った。「精神保健福祉士の養成の在り方等に関する検討会」のとりまとめ(2020年3月)においては、「求められる精神保健福祉士の役割」として次のような内容が示されている。①精神疾患・障害によって医療を受けている者等への援助(医療機関内外での相談や支援など)、②医療に加えて福祉の支援を必要とする者等への援助(日常生活や社会生活への支援など)、③医療は受けていないが精神保健(メンタルヘルス)課題がある者への援助(顕在的ニーズの発見、回復への支援、アウトリーチなど)、④精神疾患・障害や精神保健(メンタルヘルス)課題が明らかになっていないが、支援を必要とする可能性のある者への援助(情報提供、理解の促進、潜在的ニーズの発見、介入など)、⑤ ①~④に関連する多職種・多機関との連携・協働における調整等の役割(マネジメント、コーディネート、ネットワーキングなど)、⑥国民の意識への働きかけや精神保健の保持・増進に係る役割(普及、啓発 など)、⑦精神保健医療福祉の向上のための政策提言や社会資源の開発と創出に係る役割。精神保健福祉士は、精神障害者やメンタルヘルスの課題がある者への援助とともに、国民への啓発活動、政策提言や新たな社会資源の開発、創出といった多様な実践を、高い倫理観と実践力をもって行う専門職であるといえる。なお、精神保健福祉士の資格を有することで、以下の任用資格も与えられる。精神保健福祉相談員、知的障害者福祉司、身体障害者福祉司、児童福祉司、児童指導員、家庭支援専門相談員、里親支援相談員、生活支援相談員など。精神保健福祉士の活躍の場は、精神科病院、診療所、保健所、精神保健福祉センター、社会復帰施設、障害福祉サービス等事業所、保護観察所等多岐にわたり、その場に応じた多彩な活動が展開される。精神保健福祉士の職務2.精神保健福祉士
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